アメリカ年金制度、節税方法と運用状況を超具体的に紹介!【2022年版】

アメリカ生活

日本でも複雑な年金制度ですが、アメリカでも日本人にとってはさらに馴染みのない世界が広がる年金制度。筆者は今まで年金や税制に関して、そこまであまり気にしてこなかったのですが、アメリカ生活も長くなってきて、これからもまだまだアメリカにいる可能性もあるということで、重い腰をあげて、この年金や税制について、素人ながらに調べてみることにしました。

 

本記事は、日本から駐在できている日本人の方や、今後永住権などを取得してアメリカに長期で住まれる方向けに書いています。情報は2020年6月時点執筆、2022年2月に加筆修正した最新のものを活用しているつもりですが、正確性を欠いている可能性もあります。詳しくは、会計士や税理士、ファイナンシャルアドバイザーにも確認いただくことをおすすめします。

 

それでは、早速記事の本題に移っていきたいと思います。

 

公的年金制度

アメリカ国旗

 

まず一言で「年金」と言っても、アメリカでは複数の種類の年金が登場します。順にご紹介していきますが、最初に紹介したいのはソーシャルセキュリティです。

 

ソーシャルセキュリティは米国連邦政府が管理、提供する公的年金制度のことで、日本でいうところの厚生年金にあたります。ソーシャルセキュリティは社会保障とも訳されます。ソーシャルセキュリティの保険料は社会保障料としてIRS(Internal Revenue Service、日本で言う国税庁)が徴収し、給付は、SSA(Social Security Administration、日本で言う日本年金機構)が行います。人々が雇用されている間は、社会保障料として給与の6.2%が源泉徴収され、雇用する企業もその同額を拠出して税金を納める必要があります。拠出する際の給与の最高金額は2022年は$147,000.00、納税金額で$9,114.00が年間の最大値となっています。

 

SSAホームページ(納税金額情報)

 

連邦政府が管轄するソーシャルセキュリティの受給できるタイミングは62歳以降で、四半期ごとに社会保障の税金が一定金額以上を超すと1クレジット、年間で最高4クレジットまで手に入れることができます。このクレジットを40貯める(10年間、四半期ごとに社会保障を払い続ける)と受給資格が生じます。ソーシャルセキュリティでもらえる年金には主に3種類あり、Retire Benefits(リタイア年金)、Disability Benefits(障害年金)、 Survivors Benefits(遺族年金)となっています。年金ではありませんが、医療保険(Medicare)もソーシャルセキュリティが提供するベネフィットと言えるでしょう。

 

年金を受け取り始めるタイミングに関して、受給開始年齢を62歳とすることもできますし、70歳まで先延ばしすることも可能になっており、受給金額は受給開始年齢で変わってきます。

 

SSAホームページ(受給開始時期と金額の変化)

 

続いて、ソーシャルセキュリティでもらえる年金3種類について、細かく見ていくことにしましょう。

 

Retire Benefits(リタイア年金)

一般的に年金という言葉を聞いて、思い浮かべるのがこのリタイア年金でしょう。ある一定の年になれば、月々自動的にお金が振り込まれるようになります。一番早い申請で62歳から、70歳まで先延ばしできますが、早く申請をすればするほど、月々に支給される金額が少なくなります。支給にあたって必要な情報は以下の通りとなっております。

 

・Your Social Security number(ソーシャルセキュリティナンバー)

・Your birth certificate (出生証明、持っていない場合はアメリカの州や日本の自治体からの書類プラス翻訳を取り寄せる必要あり)

・Your W-2 forms or self-employment tax return for last year(前年度のW-2フォーム)

・Proof of U.S. citizenship or lawful alien status if you (or a spouse or child applying for benefits) were not born in the U.S.(米国市民である証明、もしくは合法的な外国籍居住者である証明)

・The name of your bank and your account number so your benefits can be directly deposited into your account.(銀行口座情報)

 

詳細は、SSAホームページをご覧ください。

 

Disability Benefits(障害年金)

障害年金ですが、The Social Security Disability Insurance Program、The Supplemental Security Income (SSI) Programという2種類のプログラムのもと、運用されています。もし事故や病気などで障害を持ってしまった場合、いずれかが適用されることになりますが、どちらのプログラムでどのくらいの金額保障がなされるかは、基本的には承認ベースとなっています。提出する書類もかなり細かくケースバイケースなようなので、まずはSSAに問い合わせてみることをおすすめします。必要情報は以下のページで紹介されています。

 

SSAホームページ(障害年金の受取に関して)

 

Survivors Benefits(遺族年金)

遺族年金は、亡くなる方が支給要件のクレジットを満たしていれば、その家族である配偶者、子、親のいずれかがもらえる仕組みになっています。納めた税金の金額や家族の条件によっても変わってきますが、月々$1,300 – $2,700 が現在の相場のようです。

 

SSAホームページ(遺族年金の受取に関して)

 

企業型年金(401K)

アメリカのニューヨークの風景

 

先ほどの章ではアメリカ連邦政府が運営する公的年金について、ご紹介をしてきましたが、続いてアメリカの企業型年金である401Kの説明をしていきたいと思います。

 

企業型年金(401K)とは?

401Kは企業が従業員のリタイア後のために準備する、税制優遇のアカウントという位置付けになります。この401Kのアカウントに入金されるお金は各種税金が引かれる前のものになりますので、税控除のメリットを享受できます。401Kを提供するかしないかは、各企業の任意となっており、401Kが存在しない企業も多くありますが、アメリカの公的機関the U.S. Bureau of Labor Statisticsが2019年3月に行った調査によると、アメリカの労働人口のうち60%が企業型年金である401Kに加入できる状態であることを考えると、アメリカにおいては広く普及している制度だと言えるでしょう。

 

出典元:Investopedia

 

企業型年金(401K)の仕組み、特徴

まず雇用主が自身の従業員のみに提供できるというのが401Kの特徴です。転職する場合は、そのまま資金を置いておくこともできますし、その企業で働いて貯めた資金を、次に勤める会社が提供する401Kのアカウントに移動させることもできます。また、次の勤め先が401Kを提供していない場合は、個人型年金であるIRAに移動させることも可能です。IRAに関しては、次の章で詳細に説明していきます。

 

401Kのアカウントに入金したい額を決めますが、こちらはIRSによって上限が決められていて、2022年は年間で$20,500が最大となっています。50歳を超えていれば、さらに追加で$6,500入金できるようになっています。また401Kの大きな特徴として、企業がその税控除を受けた入金額と同等、もしくはその一部をマッチさせることができます。この入金のマッチを行う、行わないは雇用主の自由となっていますが、ある統計によると56%もの企業がマッチを行なっているという結果も出ており、マッチング自体は401Kを提供している企業の間では一般的なことだと言えるでしょう。2022年の企業が提供できるマッチングの上限は、$61,000となっています。

 

自身で積み立てられる$20,500と、企業のマッチングの$61,000、合計$81,500もの金額が年間で税控除のベネフィットを受けられるので、活用しない手はないですね。後ほど、具体的な運用方法をご紹介していきたいと思います。

 

出典元:IRS

 

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個人型年金(IRA)

お金の節約イメージ

 

個人型年金(IRA)とは?

Individual Retirement Accounts(Arrangements)の略で、個人で開設が可能な退職年金用のアカウントのことを指し、アメリカでは最も普及しているリタイア用資金積立制度です。口座開設は金融機関ででき、一定額までの入金に対して、税金控除を受けられるメリットがあります。1974年に制定されたthe Employee Retirement Income Security Act of 1974 (ERISA)により創設されました。元々は、企業が提供する年金制度である401Kへ加入するメリットを受けられない中小企業の労働者や、自営業者のためのリタイア用資金の積立手段を提供するための制度でしたが、1981年の大々的な税制改正によって、企業規模に関わらず全ての人がこの個人年金であるIRAにアクセスできるようになりました。現在では、アメリカ国民のうち、約4割が活用するようになり、企業型年金である401Kよりも資産規模は大きくなっています。

 

IRAは大きく分けると2種類のプランがあり、Traditional IRAとRoth IRAがあります。それぞれ特徴とルールが異なりますので、順に紹介していきます。

 

Traditional IRA

まず、Traditional IRAですが、最も普及率の高いIRAの種類となっています。Traditional IRAの特徴は、税引き前の所得から、一定額をIRAのアカウントに入金することができ、その分に関しては税金を入金時点で支払う必要がなく、将来リタイア後にその金額を引き出す時まで所得税の繰延ができます。例えば、現在収入が$100,000ある方がTraditional IRAを活用する場合、$5,000をIRAに入金すると、課税所得が$95,000になります。所得税が仮に20%とすると、$5,000の$20%である$1,000が節約できます。将来、このお金を引き出す時に無収入だった場合、$5,000の所得に対して所得税はほとんどかからないので、$1,000分節税できるということになります。これを10年、20年のスパンで続けていくと、数万ドルの節税ができるため、老後の積立資金としてこのTraditional IRAを活用する人が多いです。

 

積立可能な金額を毎年IRSが定めていて、2022年は前年と同額である$6,000となっています。(50歳以上の方は$7,000)夫婦合算で申告する場合は、その倍である$12,000が上限となります。また、このTraditional IRAは労働者のための年金システムとなっているため、入金する金額はアメリカ国内で就業した対価である賃金(チップやボーナスは含む)から拠出する必要があり、財産投資からの収益や利子などからの拠出は不可となっているので気を付けましょう。

 

引き出しはいつでも可能ですが、59歳と半年を前にして引き出すとその年の所得に対して課税されるのに加え、10%のペナルティを支払わなければなりません。ただし、障害や教育などの特定の理由がある場合には、そのペナルティは免除されますので、その引き出すお金の用途を明確にすると良いでしょう。ペナルティの免除に関しては、IRSのページで詳しく解説されています。

 

Roth IRA

続いて、Roth IRAですが、Traditional IRAが登場した23年後の1997年に制定された新しい年金用のプランです。特徴は、Traditional IRAは税引き前の所得から、一定額をIRAのアカウントに入金し、税制控除のメリットを享受できるのに対し、Roth IRAは税引き後の金額から一定額を年金用アカウントとして拠出することができます。

 

これだけ聞くと、普通の銀行のセービングアカウントと変わらないように聞こえますが、Roth IRAの良いところは拠出した金額を投資に回し、そこで利子などの運用益が発生する場合に、その運用益に対する課税が無いところです。Traditional IRAとの違いにおいても、Traditional IRAは金額を拠出する時に元本に対する税金が発生しませんが、引き出す時に元本とその元本を運用した場合に発生する運用益が課税対象となります。

 

拠出金額の上限などの条件に関しては、Traditional IRAとRoth IRAで大きな差はありません。税引き前所得を拠出するのがTraditional IRA、税引き後所得を拠出するのがRoth IRAと覚えておきましょう。

 

具体的な運用方法

ここまで企業型年金401Kと個人年金IRAの制度や条件、特徴などを見てきましたが、「じゃあ、どうすれば良いのか?」という疑問がふつふつと湧き上がってきた方も少なくないはずです笑。筆者も色々と調べる中で、同様にどのように運用すべきなのか考えてみましたが、制度が非常に複雑なのと収入や貯蓄したい金額、人生設計によって、おすすめは大きく違ってきます。

 

とはいえ、具体的な運用方法を見てみないことにはよくわからないと思いますので、ここでは筆者が何にどれくらいの金額を拠出しているのかをご紹介していきます。運用には疎い一般人が行っているものなので、専門家の方から見るとおかしな点などもあるかもしれませんが、温かい目でこういう事例もあると見守っていただけると嬉しいです。なお、ソーシャルセキュリティは運用という考え方はなく、政府のルールにしたがって納税するだけなので、ここでは割愛して401KとIRAの運用方法をご紹介していきます。

 

401K運用状況

まず、現在所属している会社では401Kを提供していて、その401Kで積み立てを行なっています。提供されているのがSlavic401Kという金融機関のもので、ここのポータルから積立金額を設定し、自動的に給与から差し引かれて金額を拠出してくれます。

 

拠出する金額は固定額で調整することもできますし、給与の何%とパーセンテージで設定することもできます。ミニマムは1%、マックスは98%となっていますが、筆者は特に深い意味もなく7%で設定しています。そんなに普段お金を使う方ではないので、あまり使わないお金を勝手に拠出してくれるのでありがたいです笑。給与水準が高い方であれば、上限の$20,500に到達してしまう可能性もあるので、その場合は金額固定で上限の$20,500に設定すると良いと思います。

 

自分で拠出する金額が給与の7%であるのに加えて、会社がマッチングしてくれる金額が別にあります。ある一定のルールのもとマッチする金額が決まっているのですが、こちらは計算式がとても複雑です。結果的に 給与の3%程度をマッチしてもらっていますが、給与には出てこないベネフィットなのでお得感がありますね。いくら自分で拠出するかによっても、マッチングされる金額が変わってきますので、会社で401Kが提供されている場合、マッチングされる金額がどのように算出されるかを確認してみると良いと思います。

 

そしてその拠出された金額で、Vanguard、JP Morgan、Fidelityなどが運用するインデックスファンドに投資を行います。選択肢が30個ほどあり、その中で投資したい銘柄を選びます。1つのインデックスファンドを選んでも良いですし、分散投資でインデックスファンドにいくつも投資することもできます。筆者は個別銘柄の投資も行っていますが、インデックスファンドに関しては全くの無知なので、Vanguard Target Retirement 2045 Instlというインデックスファンドで積立しています。インデックスファンドなので、適当にポートフォリオを組んで作られていますが、正直細かい違いはよくわかりません。これよりも良いインデックスファンドをご存知の方、ぜひ教えてください笑。

 

IRA運用状況

続いて、IRA ですが、こちらも401Kを提供するSlavic401Kのポータルで、Roth IRAを管理することができます。Roth IRAでは課税所得後の金額を積み立てることになりますが、401K と同様、普段使わないお金の積立をするようにしていて、給与の5%に設定しています。こちらは年間の最大値が$6,000なので、その上限に到達しない金額感で設定すると良いでしょう。

 

このRoth IRAの積み立てられたお金に関して、Slavic401Kでは401Kで拠出された資金と一緒になって管理されています。筆者の場合、リタイア後まで利用することのないお金なので、細かく管理せずに自動的に積み立てをしてもらうつもりですが、この資金を移動させる時は401Kなのか、IRAなのか、どちらからの拠出で、元本や収益が移動させる時点でどう変化しているのかを計算した上で、資金の移動をさせる必要があります。

 

筆者のような丼勘定ではなく、もっと細かく管理したい場合は、別途金融機関でIRA口座を開設し、そちらで管理するというのも一つの手でしょう。IRAの調査を始めた当初、どこから手をつけて良いかわからず、筆者は個別銘柄の投資を行うCharles Schwabという証券会社の口座でIRAを開設しました。インデックスファンドでなく個別の銘柄に投資したくなったら、Slavic401Kの口座からCharles SchwabのIRA口座に移す日が来るかもしれません。

 

年金関連で参考にすべきサイト

日本の年金もそうですが、アメリカの年金制度は複雑かつ、個人の置かれた状況によりどういう運用をすれば良いのかが変わってきます。ここでは、筆者が情報収集をしていた役だったサイトをまとめてご紹介しておきます。

 

■政府機関

Internal Revenue Service

 

■米系まとめサイト

Investopedia

 

NerdWallet

 

■日系情報サイト

みずほ総合研究所

 

Happy Money USA

 

アメリカ駐在員のカネとバラの日々

 

 

まとめ

アメリカのニューヨークの風景

今回は筆者のようにアメリカでの生活も長くなりそうな日本人の方向けに、各種年金制度についてご紹介していきました。アメリカでは年金の種類も多く、また制度も複雑なのでちょっととっつきにくいですよね。筆者もそう考える一人で、いろいろなサイトをみながら情報収集し、少しずつ仕組みなどが理解できるようになりました。今でも完全に理解しているとは正直言い難いところですが笑、引き続き情報収集をしながら、運用方法をアップデートできればと思います。年金に関するご質問やご意見等ございましたら、いつでもお問い合わせページよりご連絡ください!

 

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WRITER

【🇺🇸生活、起業、経営、投資情報発信】アメスマ社長@テキサス州ダラス。MBO&事業売却後、日米4社オーナー経営中。慶應/UC Irvine交換留学。🇺🇸11年目、Accredited Investor、投資先は米国医療機器ベンチャー。NuFund、Link-J所属。趣味:旅、サッカー、テニス、ポーカー、グルメ

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